No.1ヒットぐらいは昔から知っているけれど、ほとんど聴いてこなかった人。「The Complete US & UK Singles As & Bs 1953-62」なる3枚組CDがamazonで2,000円そこそこで売られているのを見て購入。38曲のTop40ヒットをコンプリートしたので、紹介することになった次第。
印象としては、悪のElvisに対して、善のPat Booneという感じ。ロックンロールは黒人の音楽から生まれたが、Elvisがそのいかがわしさも受け継いだのに対して、Pat Booneはそれを脱色したという印象がある。彼は結構黒人のロックンロールをカヴァーしているのだが、それは品行方正ヴァージョンである。そして、黒人のオリジナルより大抵Pat Booneのカヴァーの方が売れるのも当時のお約束であった。
34年にフロリダ州で生まれ、ナッシュビルで育った。Debby Booneは娘。
05632 Two Hearts (二つの心) 55年16位
初のTop40ヒットは、ドゥーワップ・グループOtis Williams & The Charmsがオリジナル。最初から黒人の曲のカヴァーだったわけだが、感想は上に書いた通り。当時はそもそも黒人のR&Bをかける局が少なくて、Pat Booneが演ると曲がかかってヒットするという構造だったわけだ。『ビルボード・ナンバー1・ヒット』という本によれば、DJのアラン・フリードは横取りだと怒っていたらしい。
05633 Ain’t That A Shame (悪いのはあなた/エイント・ザット・ア・シェイム) 55年1位
オリジナルのFats Dominoは10位、こっちは1位か。そりゃないよな。Four Seasons、Cheap Trickもヒットさせてるロックンロールのスタンダード。ゴールドディスク。
05634 At My Front Door (Crazy Little Mama) (クレイジー・リトル・ママ) 55年7位
オリジナルはEl Doradosのアップテンポのドゥーワップで17位。元の曲は好きなんだけどね。
05635 No Other Arms (ノー・アザー・アームス) 55年26位
「No Arms Can Ever Hold You」というタイトルで知られる曲らしい。Georgie Shawでもヒット、後にBachelorsでもTop40入りしている。これは黒人関係ないポピュラーソング。
05636 Gee Whittakers! (ジー・ウィッテーカーズ) 55年19位
オリジナルはドゥーワップ・グループのFive Keys。
05637 I’ll Be Home (アイル・ビー・ホーム) 56年4位
オリジナルはあのFlamingosだが、R&Bチャートのみ。こちらは英国で何と1位に。いい曲だけどねえ。ゴールドディスク。
05638 Tutti’Frutti (トゥッティ・フルッティ) 56年12位
5637のB面。オリジナルはLittle Richard(17位)。いくら何でもそりゃないだろって順位だな。
05639 Long Tall Sally (のっぽのサリー/ロング・トール・サリー) 56年8位
最悪カヴァーはこれでしょう。流石にLittle Richard(6位)の方がヒットした。Paulのヴァージョンも忘れがたいね。
05640 I Almost Lost My Mind (アイ・オールモスト・ロスト・マイ・マインド/気も狂うほど) 56年1位
Ivory Joe Hunterが50年にR&BチャートでNo.1にした曲のカヴァー。まだバラードは許せるが、でもオリジナルを聴きたいね。
https://www.youtube.com/watch?v=T1B9V4TFM3U
05641 Friendly Persuasion (Thee I Love) (友情ある説得) 56年5位
元はゲイリー・クーパー主演の同名映画の主題歌で、ディミトリー・ティオムキン作。ちょっと眠いかな。ゴールドディスク。
05642 Chains Of Love (恋のきずな) 56年10位
5641のB面。オリジナルは51年のJoe Turner。ホントにどの曲も品行方正になってるな。
05643 Don’t Forbid Me (温めてあげたくて〜ドント・フォービッド・ミー) 56年1位
Elvisも歌ってるバラード。オーケストラはBilly Vaughn。ゴールドディスク。
05644 Anastasia (アナスターシャ/アナスターシア) 57年37位
5643のB面。イングリッド・バーグマンとユル・ブリンナーが主演した同名映画(邦題『追想』)のテーマ曲。作曲はアルフレッド・ニューマンで、これもBilly Vaughnのオーケストラ。
05645 Why Baby Why (ホワイ・ベイビー・ホワイ) 57年5位
これは珍しくオリジナルのようだが、アップテンポのドゥーワップ風。ゴールドディスク。
05646 I’m Waiting Just For You (君を待ちわび) 57年27位
5645のB面。どちらもBilly Vaughnのオーケストラ。これもOtis Williams & The Charmsのカヴァー。
05647 Love Letters In The Sand (砂に書いたラヴ・レター) 57年1位
7週No.1(とJoel Whitburnには書いてるが、Wiki等では5週)。やっぱり大ヒットした曲は今聴いても違うねと思ったら、オリジナルは31年のTed Black & His Orchestraのヒット曲だった(6位)。大ヒットの要因は彼が主演したミュージカル映画『Bernadine』の挿入歌として使われたため。ゴールドディスク。
https://www.youtube.com/watch?v=lPNH3W_4zVE
05648 Bernadine (ねねバーナティーン/いとしのバーナディーン) 57年14位
5647のB面で、こちらが映画の主題歌。作曲は「Moon River」のJohnny Mercer。軽いノリがいいかも。
05649 Remember You’re Mine (リメンバー・ユア・マイン) 57年6位
牧歌的だなあ。Charlie GracieのNo.1ヒット「Butterfly」を作ったBernie LoweとKal Mannによる曲。ゴールドディスク。
05650 There’s A Gold Mine In The Sky (あこがれを空の彼方に) 57年14位
5649のB面。5647と同じ作者による38年の映画より。牧歌的というのか、わからんが、すっかりこの路線が定着してきた感じ。
05651 April Love (四月の恋) 57年1位
彼が主演した映画の主題歌。『慕情』(Love Is A Many Splendored Thing)のSammy Fain、Paul Francis Websterの作曲。実にクラシカルな曲。ゴールドディスク。
3年間20曲を何とか紹介したが、黒人のR&B、ドゥーワップのカヴァーから、Billy Vaughnがアレンジを担当した映画の曲中心にシフトしていったことがわかる。後者はクラシカルではあるが、黒人のパクリよりはずっといいんではないか? 明日は58年以降。
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